やはりというか、規定路線というか、、、やはりブログの更新が激遅になっております。。。
投資家向けピッチイベントで陥りがちなワナ
一応オシゴトが忙しくって、、、という言い訳がてら、最近、仕事がら投資家向けピッチイベントやピッチ大会に審査員や参加者とし行かせて頂く機会が多くある。日本でもシード・アクセレレーター、エンジェルなどシード期に投資する投資家の層が厚くなり、スタートアップの絶対数も増え、また組織的にシード期以降のファイナンスを支援する仕組みができてきたということで、非常に喜ばしいことだ。ある地域でスタートアップのエコシステムがうまく回りだしホットスポット化するまで、今のシリコンバレーが7世代、ニューヨークが4世代、だいたい4世代かかると言われているので、どこから数えるか微妙なのだが、日本もだいたい3、4世代目なので、そろそろエコシステムとして厚くなってきたということだと思う。
しかし、冒頭のようにスタートアップの投資家向けのピッチイベントに参加させて頂き、せっかくスタートアップの皆さんも気合いをいれてすばらしく出来の良い資料を準備し、プレゼンテーションの練習もしてきたのに、ピッチを聞いても「興味があるか判断不能」、「???」となってしまうことがが多い。せっかく良いプロダクトを作っていたり、ちゃんと話を伺ってみたりすると良い事業なのに、もったいないなぁというのが、正直な感想。
では、どうして、そんなことになってしまっているかというと、簡単にいうとプロダクトを売り込むピッチになってしまっているからだと思う。つまり、ピッチの内容と、ピッチの目的やオーディエンスである投資家が聞きたいこととが、ズレてしまっているのだ。投資家にとっては、事業全体、もっと言うと事業がスケールするかどうかが最大の関心事なのだ。そして、投資家向けのピッチイベントとしては、目的は投資家に次回ラウンドでのファイナンスを前提に興味をもってもらうことかと思う。で、ピッチイベントは、だいたい2-5分という非常に短い枠内で、しかも多くの場合数十社も同じイベントでピッチをする。その中で、頭ひとつ抜け出さないといけないのは非常にキツイと思う。投資家側も2-5分のピッチだけを聞いて、投資としての興味の有、無を判断するというのは難しいものだ。なので、ピッチイベントはあくまで出会いの場で、具体的な話を始めるきっかけで良い。と、いう意味では、ピッチイベントの目的は、投資家に興味をもってもらって、もう一度ゆっくりサシで話を聞きたいと思わるというゴール設定で良いと思う。逆に言うと、イベントの短いピッチの中で、自分の事業、会社について全てを語る必要はないのだ。そこはじっくり話をする次回以降、膝を突き合わせ喧々諤々やりながら伝えていけばよい。
では、投資家に興味をもってもらって、一度ゆっくり話をするアポイントをとるにはどうしたら良いのだろうか?(僭越ながら、、、)投資家からすると、“スケールする可能性を感じるか”の一言に尽きる。粗削りでも良い、実現可能性については色々疑問がわいても良い、とにかく大きな絵を描いていて、大きくスケールするポテンシャルを見せつけてほしい。「私を騙して連れ去って」という気持ちに近い(半分笑 半分本気)。
で、じゃぁ、スケールする可能性はどうやったら感じさせられるか?パターンは3つ(または、その組み合わせ)くらいしかないような気がする。わかりやすい順、難易度が低い順でいうと;
(1) とにかく市場がめちゃめちゃ伸びてる
事業をやるにせよ、投資をするにせよ、一番鉄板なのが、伸びている成長をドメインにすること。伸びている市場で勝ち抜けば大きな成果があるし、自社の業界内での位置付けが横ばいでも市場の伸びで自然に伸びる。出来立てのころの、ゼロから3000億の市場が立ち上がっていったソーシャルゲームなんかが良い例だ。
(2) (市場規模はそこそこで成長は余りしていないが、、)絶対に勝てる
市場規模は“そこそこ”の「“そこそこ”って、どれくらいや?!」というつっこみはありつつ、個人的な感覚ではざっくり1000億円、少なくとも数百億後半のイメージ。そこで、圧倒的かつ持続可能な競争優位性があって、長期的視点で勝てるということ。ミソは、“持続可能な”競争優位ということ。一過性のトレンドみたいなもので、一次的に業界一位になってもしょうがない。イメージとしては、中長期的にうまくいった場合1000億市場で一位、20-50%とって、売上200-500億みたいな感じ(利益率にもよりますが)。既存のリアルに縛られた古い業界をネットで置き換えるモデルにありがちなパターン。例えば、投資先だったネットプリントのしまうまプリントは、デジカメプリントで徹底したネット化、IT化、オペレーション効率で、世の中の写真プリント枚数が横ばいの中、リアル店舗や家庭用プリンターからシェアを奪っていった。
(3) 経営陣がとにかくワイルドで大物感を感じる
とにかくThink Bigで大きな構想を持ち、リスクテーカーな経営者。このような方は人間的に魅力的で、思わず会ってサシでお話を聞いてみたくなるもの。じっくり話を聞いてみる段階になると、事業の要素もでてくるが、投資家向けピッチイベント後に会ってゆっくり話をきいてみたいと思わせるには、結構有効だったりする。
では、ピッチをどうしろと??
2-5分の短い時間のピッチはどのような構成にすべきか?まずは、何より「投資家にひとつだけ伝えるとしたら、何を伝えるか」を決め、それだけを伝えること全てを紐づかせるべきだと思う。
具体的な、スライドの構成要素としては
(1) Problem→Solution: 解決する世の中の課題/ニーズは何か?自分達はそれをどのようなプロダクトで解決するのか
(2) プロダクトの主要部分の説明: ユーザに対してどんなベネフィットを提供し、どんな機能があるのかを、あくまで主要の部分に絞って
(3) プロダクトの実績: 売上なりユーザ数なりプロダクトが急激に伸びていることの定量的な説明。市場が伸びているなり、絶対勝てるなり、とにかく定量的な実績は説得力がありがち
(4) 市場、競合: 市場規模・成長性、競合の強さなど
(5) チーム: 経営陣を中心に、この事業で必要な組織能力や強みをチームの経歴から説明
な感じになると思う。でも、繰り返しになるが、(1)-(5)を平坦に全て等しく伝えようとしてはダメだと思う。たった1つの伝えたいメッセージに沿って、濃淡付けをし、場合によっては大胆に省略しても良いと思う。まずは、背景を理解して貰うための(1)や(2)はなるべくコンパクトにする。と、言う意味で、「プロダクトを売り込むな!」ということになる。そして、伝えたいメッセージを補強するために重要な部分には大きく時間を割く。例えば、「市場がとにかく伸びている」と伝えたかったら、市場の所を力説して、競合とかプロダクトの説明とかはさくっと終わらせて良いかもしれない。もしくは、「絶対勝てる」と伝えたかったら、競合やチームの所を大きく取り上げて、市場の説明は短くても良いかもしれない。とにかく全部をカバーしようと欲張らず、伝えたいメッセージひとつで一点突破する方が、次につなげるというピッチイベントの目的には叶うように思う。
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と、一方的に、投資家が聞きたい視点で、ピッチイベントでのスタートアップのピッチに述べた。最後に日和って言うと、あくまで私見かつ投資家の立場でのコメントになりますので 汗 (蛇足ながら、投資家向けではなく、その他オーディエンスをターゲットにしたイベントでは目的が異り、当然ピッチの内容も異なると思うので、、、。)
ps
色々な投資家向けピッチイベントで審査員や参加させて頂いておりますが、最近参加した特定のイベントや特定のピッチへのコメントではなく、業界全体へのばくっとした感想として。