View of The World - ベンチャーキャピタリストの世界の見方

グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー / 代表パートナー 高宮慎一のブログ (*個人的見解であり、所属する組織、投資先の見解とは異なります)

スタートアップ

スタートアップ2021&Beyond: ②スタートアップ資金調達環境編


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こんにちわ高宮です。
Clubhouseで界隈が盛り上がっていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

 

前回のポストで「時代は5年後の未来にワープした」と言ったので、2年半に1回のはずが即座に2回ポストすれば、時代に追いつけるのでしょうか?

 

と、いう訳で、『スタートアップ2021Beyond』第二回目は、『②スタートアップ資金調達環境編』です。簡単に言うと、「スタートアップの皆さん、まだまだ良い調達環境続きます、より大きく成長するための土壌は整ってきています」、ということだと思っています。

 

 

1     未上場調達市場でも金余りは続きスタートアップにとって絶好の調達環境は続く

 2021年、そしてBeforeコロナはスタートアップにとって絶好の資金調達環境だった。事業会社、政府系の資金、機関投資家の資金の流入により、2014年には740億円だった日本のスタートアップの資金調達総額は、2019年には2162億円となり、急速な成長を遂げた。

2020年コロナ禍によって、資金調達環境は一変するかに思えたが、大きな流れは変わらなかった。4-5月の1回目の緊急事態宣言下では、わからないことが多すぎて社会全体が委縮し、事業環境は悪化し、投資家は慎重になり、一時的にスタートアップの調達環境も大きく冷え込んだ。しかし、あくまで一時的であり、緊急事態宣言を脱すると『スタートアップ2021&Beyond ①マクロ編 』でも書いたように実体経済はBeforeコロナとまではいかなかったものの需要側供給側ともに急速に戻した。コロナ以降、事業会社の中には本業の業績悪化によりスタートアップ投資にブレーキをかけたところもあり、事業会社のBSないしは一人組合(投資家がその事業会社のみのファンド)での投資は一部縮小したが、総じて言うとスタートアップ投資家の投資意欲は大きくは減退しなかった。VCに関しては、ひとたびファンドを集めると、プロ投資家としてはその資金を運用する必要があるため、投資意欲は大きく減衰することはない。また、インバウンドや飲食などの一部セクターではコロナの影響を大きく受けてしまったが、多くのスタートアップにとっては追い風となり、また多くの事業機会、テーマが登場した(次回は、『③スタートアップテーマ編』)。その結果、投資家の投資意欲は、高止まりしている状態にある。

 今後という点でも、継続的なVCへの資金の流入、VC産業のすそ野の拡大と競争時代の幕開けとなり、スタートアップにとっては絶好の調達環境は続くだろう。社会、経済全体、大企業という点では、コロナ禍は全世界的に大きなマイナスインパクトとなり、各国の中央銀行は大幅な金融緩和を行い、世界同時的な金余りの状況となり、投資家の資金は伝統的資産(上場株式、債券)からあふれ、VCにも大きく流れ込んできている。実体経済が回復するまで、金利は上けられないことを考えると、VCへの資金流入は継続し、スタートアップへの潤沢な資金供給はしばらく(年単位で)続くだろう。さらに世界的な金余りは、活況な株式市場とIPO市場をもたらしていて、スタートアップ投資家にとってのExit Valuationを押し上げている。結果として高いEntry(投資時) Valuationを許容できるようにしている。VCへの資金流入によって、スタートアップ投資家間の競争も始まり、スタートアップの好条件での調達を可能とするだろう。

 

 

2 レイトステージ投資家も増え百億円の桁での調達も可能になり、上場までの時間を戦略的に長くすることが可能に

 潤沢な資金のスタートアップ投資への流入、VCの大型化、上場株投資家やバイアウトなど今まではスタートアップ投資を行ってこなかった大型資金の担い手の参入などによって、数十億円、100億円といった規模のレイトステージにおける大型調達も可能となった。メルカリは上場までに176億円調達し、20201-10月において100億円以上調達したスタートアップは2社、50億円以上は10社にも上っている。

上場すると株価を維持するために短期的な業績プレッシャーがかかるのに比べ、未上場の間は投資家の種類が違うため、短期的な赤字や長期目線での事業投資が許容されやすい。大きく成長したスタートアップであればあるほど、事業成長の極大化や経営の柔軟性の確保のために、未上場で調達できる間はなるべく上場を引き延ばそうという方向に向うこととなる。

上場までの期間が長く、累積調達金額が大きくなると、今まで以上に資本政策=どのような投資家を入れるかは、その調達ラウンドのスナップショットの点でなく、上場までの道のりを見据えた線で考えることの重要性が増す。具体的には、シードから大型レイトステージまで一社のリード投資家だけでカバーしきれない場合は、上場までの必要な累積調達額や次ラウンド以降のフォローオン(追加投資)を意識しながら、異なるステージを主戦場とする複数の投資家を入れながら、重複する糊代期間を作り、リード投資家をバトンタッチしていくような体制も検討すると良いだろう

また、初期から支えた投資家、場合によっては起業家に上場前にExitの機会を作り出すということも増えるだろう。実際に、上場株投資家、PEなどレイトステージが主戦場の投資家にFund to Fund(ファンドからファンドへの売却)でのVC持分の売却や起業家の持分の売却事例も出てきている。今までの日本においては、上場までの道半ばでのセカンダリーの持分売却は、大きくディスカウントされてしまうケースが多く、売却する投資家が期待するようなリターンが出ることは稀だった。投資家のExitという観点でも、上場までの期間を長く取れる土壌が整ってきている。

 

 

3 投資家間の競争激化によって、投資家を選ぶ理由としてお金以外の支援がさらに大事に

 金あまりの時代の中、VC間の競争も徐々に始まってきている。VCは資金を提供するだけでは差別化ができなくなっていく。VCファンドの大型化は進み(グロービス・キャピタルで言っても20144号ファンド115億円、2016年組成の5号ファンド200億円、20196号ファンド400億円と、個別ファンド及びアクティブなファンドの総額ともにサイズアップしていっている)、今後は数も多くなるだろう。1000億円規模の上場株投資家やバイアウトファンドもスタートアップ投資に参入してきており、大型レイトステージのラウンドも徐々に混み合ってきている。今後は投資可能金額だけでは差別化できなくなるだろう。すると、VC間の競争のフロンティアは、お金以外でどのようなValue Add=支援をするかに移る。ベンチャーキャピタリストが社外取締役となり、経営レイヤーで戦略や組織作りの壁打ち相手になるのに加えて、Value Add Teamによるオペレーションレイヤーでの支援も拡大していくだろう(実際グロービス・キャピタルでも、GCP Xというバリューアッドチームが、社外取締役の担当キャピタリストと連携しながら、CXOクラスからメンバーまでの採用支援や組織戦略立案、組織構築、仕組み化支援を行っている)。するとスタートアップとしては、今まで以上に、まずは自分たち自身でお金以外でどんな支援を受けたいのかを明確化し、それを提供してくれる投資家を選ぶことが重要となっていくだろう。

 

 

「好調な資金調達環境に裏打ちされ、レイトステージ大型調達が可能となり上場までの期間が長くなる。VC間の競争も始まり、資金以外でのValue-addが盛んになる。」この業界の進化は、まさにUSのスタートアップ業界がたどった進化の道であり、日本でもこの流れは確かなものとなるだろう。

日本のスタートアップ業界のビフォーメルカリとアフターメルカリ

毎回投資先がIPOM&Aを迎えると子供が成人式を迎えたようなセンチメンタルな気分になってしまう、、()

 

日本のスタートアップ業界は、ビフォーメルカリ、アフターメルカリで大きく変わる。メルカリのIPOはそれくらいの大きなランドマークだと思う。

 

大きなビジョンを描き、大きく資金調達して、未上場のうちに大きく世界に打ってでる。今までの歴代の錚々たる日本のスタートアップが、できなかったことをやってのけ、日本のスタートアップ業界のロールモデルとなった。何よりも大きいのは、「メルカリが出来るなら、オレ達だって!」と後に続く起業家のマインドを大きく変えてしまったことだ。そして、メルカリそのものの上場で直接的に多くの起業家、エンジェル、VCなど多くの業界関係者を後押しするだろう。しかし、それ以上に業界全体にチャレンジするマインド、チャレンジすればイケるという空気感を醸成したインパクトは大きい

 

創業者の山田さんは、僕がVC駆け出しのころ、山田さんの前の会社ウノウのコールドコールでinfoにメールしたら、社長の山田さんが出てきてくれたというのが出会い。以来、一緒にスカッシュをやったり、家族ぐるみで集まったりと完全に友達になり、この人ならとウノウの時から投資したかったのが、メルカリがはじまってようやく機が訪れ投資させてもらった。プロダクトが出た後の最初のラウンドから社外役員/株主としてご一緒させて頂き、純粋に友人として、友達がここまでのすごいことを成し遂げたのはうれしいし、その成長の過程を同じ船に乗せて体験させてもらえたのは人生の宝だ。

 

メルカリには、これまで以上に大きく飛躍してもらい、日本から世界にでるメガベンチャー、新産業のために、ヒデオ・ノモのように道をつけてもらいたいし、応援したい。そして、僕もメルカリがキャリアハイとなることないよう、メルカリに続くスタートアップを支援し、メルカリ以上に大きく成長させ、日本に新しい産業を生み、世界に挑むのを、今まで以上にガッツと矜持を持って取り組んでいきたい。


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資本市場がクラッシュした時、ベンチャーは?!

『Why Capital Markets Matter』
Twitter、Tumblr、Foursquare、Zynga、Kickstarterなどに投資しているベンチャーキャピタリスト Union Square VenturesのFred Wilsonによる資本市場がクラッシュした時の、ベンチャーへの影響についてのポスト。


『自社の事業がキャッシュフローを生み出していて、成長のための必要資金を賄えるのでであれば、資本市場クラッシュの影響は少ない。
でも、今後も資金が必要で、キャッシュフローで賄えないなのであれば、影響はある。

シンプルだが、その通り。

本当に資本市場がクラッシュするのであれば(エコノミストでもないのでマクロ市場を占える訳でも何でもないのだが、”もし”本当にそうなら)、ベンチャーとしてできることは;
1) 身の丈にあった成長投資とキャッシュフローの改善
なるべく安定的なリピート売上を確保し、投資や固定費を身の丈にあった範囲に押さえるー当たり前ですが一番手堅い打ち手です。

2) 籠城用の兵糧をためる
未上場投資家の投資意欲が衰える前に、調達をしておく。経験豊富なVCほど悪い時も継続的に投資しますが、初めての不況に直面する新しいファンド、金融系・事業会社系VC、事業会社などは、マクロの状況の影響に左右されることもあり、過去には(99年.comバブル崩壊、05年プチネットバブル崩壊、08年リーマンショック後)など、投資を絞るケースがありました。ベンチャー業界全体への総資金供給としては、絞られる可能性があると認識しておいた方が安全でしょう。

3) マクロが悪い状況での次ラウンドに備えた条件で調達する
前述の調達の際に、足元の好況の波にのって(ベンチャーにとって有利な)良い条件で調達しすぎると、マクロの景況悪化によって、未上場の調達の相場観も大幅に調整された後に、相場から見ると大幅に割高になってしまうリスクをはらんでいます。事業が成長しているのに、次のラウンドで条件が悪くなるという形になると、既存投資家のとの調整がかなり難航します。次のラウンドを見据えて、”ほどほどに良い条件”で調達するのが良しでしょう。

資本市場がクラッシュすると決して言い切れませんが、
バラ色の未来を前提に夢を語り、最悪に備えて打ち手を打つ
のが経営者の仕事だと思いますので。

日本のニュースキュレーションアプリ戦争に見る3つの戦略

*本稿は、同僚の湯浅エムレ秀和さんとの共著により、Tech in Asia に寄稿した内容(原文英語)をThe Bridgeが日本語版を掲載したものの転載です。筆者が所属するグロービス・キャピタル・パートナーズは、本稿で言及のある SmartNews や NewsPicks を運営するユーザベースに投資しているが、本稿の執筆にあたり秘密情報は利用していない。

 
 

ニュースキュレーションは、次のモバイルポータルになる可能性があり、モバイル業界では魅力的な新境地だ。2014年から日本が見舞われているニュースアプリの戦いを見ると、この市場で勝利するには新聞戦略、マガジン戦略、プラットフォーム・フィーダー戦略の3つの方法があることがわかる。

 

SmartNews とグノシーは新聞戦略をとっている。NewsPicks Antenna はマガジン戦略をとり、ビジネスニュースに興味を持ち、反応に敏感な熱狂者のコミュニティを作り上げることに成功している。一方、LINE NEWS Yahoo!ニュースは、プラットフォーム・フィーダー戦略をとっていることで有名だ。

 

日本市場から得られる教訓をもとに、これら3つの戦略、それらのキーとなるバリュープロポジションや主要成功要因について見ていきたいと思う。

 

ニュースアプリの何が凄いのか?

ニュースは誰もが毎日消費するものであるからユニークだ。したがって、PC 時代の Google Yahoo! のような、強いモバイルポータルになるという点で、その普遍的な魅力や高いエンゲージメント・レートからニュースアプリは良いポジションにいる。2014 年には、PC よりもモバイルでニュースを読む人の方が多かった。

 

日次ユーザ数を月間ユーザ数で割って得られるエンゲージメント・レートは、モバイルアプリがどの程度アクティブに使われているかを表すが、SmartNews やグノシーでは、その値が50%に近づいており、数百万人のユーザを持つアプリとしては、例外的に高い数値となっている。

 

多くのユーザと高いエンゲージメント・レートという二つの指標が、マネタイズにつながる強靭なユーザ・トラフィックを生み出している。マネタイズの一つの方法は広告だ。従来からあるバナー広告は、小さなスマートフォン画面では目立たないことが明らかだ。対して、ニュースアプリではネイティブ広告の恩恵に預かっている。ネイティブ広告は、通常コンテンツと見栄えが酷似しているため、アプリの UX に悪影響を及ぼさない。

 

2014年、SmartNews とグノシーは共に自社アドネットワークをローンチ、ネイティブ広告は今後数年間で年30%の成長が期待されるとして、市場はこの動きを歓迎している。

 

マネタイズの他の手段としては、他サービスへのトラフィック誘導が挙げられる。グノシーは201410月、11のサービスと提携し互いにトラフィックを誘導しあう計画を発表した。グノシーは、さまざまな層へのリーチを試みるサービスプロバイダーと共に、ユーザの興味についての多岐にわたるデータを活用する。

 

モバイルポータルが戦略的に重要であること、そして、巨大な利益機会が担保されていることこそが、起業家や投資家がマーケットリーダーになろうと必死になる大きな理由だ。これらの企業が同じ目標に向けて、どのような異なる方法をとっているかを見てみることにしよう。

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横軸:ニュースアプリが広分野のニュースを扱ったか、特定分野にフォーカスしたかで、コンテンツの幅を表す

縦軸:ユーザが情報を受動的(読んだり、シェアしたり)または能動的(コメントしたり、まとめしたり、いいねしたりなど)に情報を扱ったかで、エンゲージメントの深さを表す


上図からは、日本でニュースアプリの戦いに
3種類のプレーヤーがいることがわかる。そのうちの2種類は、スタートアップにとって効果的だ。3種類のプレーヤーと、彼らの戦略がどのように機能するのかを見てみよう。


戦略
1: 新聞戦略
 

この戦略をとるアプリのキーとなるバリュープロポジションは、ユーザが非常に簡単かつ手早い方法で、最も人気のあるニュースが得られるという点だ。新聞戦略をとる主要なプレーヤーは、SmartNews とグノシーだ。

 

これらのアプリは、人気のあるニュース記事を見極めるため、Facebook Twitter のソーシャルフィードを分析、自然言語処理技術を使ってカテゴリ別(ビジネス、スポーツ、エンタメなど)に分類し、スマートフォンに最適化された UI で表示する。また、メディア企業と提携し、単一のメディアからの記事に特化したページが開設できるようにしている。よりよいUXを実現するため、フォントの自動調整、高速キャッシュ、オフラインモード、整理されたインターフェース、直感的ナビゲーションなどの機能も提供している。

 

このカテゴリにおける成功要因はスケーラビリティだ。好循環が一度回り始めると、ユーザの規模もメディアパートナーの数も十分に大きなものになるからだ。次に SmartNews がどのようにスケーラビリティを築き上げたかを見てみよう。

  • 技術……SmartNews はメディア企業というより Google に近い。数千万件におよぶ記事を評価し、同社が持つ独自ランキングアルゴリズムにより、リアルタイムで人気の高いニュースを公正に検知しカテゴライズしている。コンテンツを分析し、ビジネス、エンタメ、ライフスタイルなど異なるカテゴリに分類される。前述したように、ユーザは整理された UI/UX を楽しむことができる。最終的にユーザの手元に届くプロダクトは、動きの速い、直感的で整理されたインターフェイスの、誰もが使えるニュースアプリだ。この点において、グノシーと SmartNews は互いによく似ている。
  • メディア提携……多岐にわたるコンテンツをユーザに届ける上で、メディア提携は非常に重要だ。SmartNews はメディアパートナーに対して、ユーザの誘導と売上の供給という2つのメリットを提供している。201412月現在、10社を超えるパートナーが SmartNews から月間1,000PV 以上のトラフィックを享受している。
SmartNews は、広告売上の40%をコンテンツプロバイダーと共有すると発表している。コンテンツプロバイダーは長年にわたり、オンラインでマネタイズすることに苦戦を強いられている。現在では、概ね100社のメディアパートナーが SmartNews と提携している。

SmartNews もグノシーも、ユーザとメディアパートナーの数が成長し続けているため、両社にとって新聞戦略はうまく機能している。投資からは信頼を(これまでに、SmartNews 4,000万ドルを、グノシーは2,400万ドルを調達)、ユーザからは熱意を(月間アクティブユーザ数は、SmartNews が現在400万人、グノシーは報道で201411月現在で300万人とされている)獲得している。

 

この戦略は日本以外でも通用するようだ。SmarNews は、ウォール・ストリート・ジャーナル・オンライン版のクリエイター Rich Jaroslovsky 氏を起用後、201410月にアメリカでローンチした。3ヶ月で月間アクティブユーザ数100万人を突破し、30社のメディアパートナーと提携した。どちらの数字も増加しづつけている。

 

戦略2: マガジン戦略


この戦略をとるアプリのキーとなるバリュープロポジションは、似た興味を持つユーザ同士のコミュニティを形成できる点だ。この戦略のチャンピオン
2つは、ビジネスニュースの NewsPicks とライフスタイルニュースの Antenna だ。

 

いずれのアプリも、ユーザにアカウントを作成させ、他のユーザをフォローさせ、仲間のコミュニティメンバーと対話させることで、パーソナライゼーションを強調している。NewsPicks は、平均ユーザが1日あたり11分間、最もヘビーなユーザで毎日40分間アプリを使っていると発表した。

 

主要な成功要因は、頻度と深度でユーザのエンゲージメント・レベルを高めるられるかどうかだ。NewsPicks Antenna は、強いコミュニティを維持しユニークなコンテンツを提供することで、ユーザをエンゲージしている。

 

  • コミュニティ……緊密なコミュニティは、アプリを使い続けようとする動機付けになる。NewsPicks Antenna は、ユーザにアカウントを作成させ、他のユーザをフォローさせ、好きなニュースを保存させることで、ニュースを読む体験をパーソナライズすることができる。このパーソナリゼーションは、一般の人々の興味と大きな違いがあるときに最も機能するので、両社はニッチな関心に特化しているとも言える。NewsPicks のユーザはニュースにコメントでき、このコメントはフォロワーのフィードに表示され、最も多くの「いいね」を得られたコメントは上位に表示される。この投票メカニズムは、ユーザに質の高いコメントを書く動機を与えている。Antenna は、好きなニュースをクリップしてもらうことでコミュニティを形成し、ユーザはそれらのニュースを集めた「クリップブック」をフォロワーと共有することができる。
  • ユニークなコンテンツ……ニュースの幅より深さで競っている両社にとって、ユニークなコンテンツは重要だ。この理由から、NewsPicks はビジネス記事を書く自前の編集部を持ち、有料ユーザに対してのみ月額1,500円で記事を提供している。このオリジナルコンテンツには、ビッグニュースの詳細分析、ビジネス界の卓越した人々のインタビュー、主要なビジネスの出来事の振り返りなどが含まれる。NewsPicks のアプリでユーザが書いたコメントは、他では得られないユニークなコンテンツとなっている。


戦略
3: プラットフォーム・フィーダー戦略(既存プラットフォーム・プレーヤー向け)
 

この戦略は、既にヤフーや LINE くらい多くのユーザを抱えていない限り、たいていのスタートアップにとっては適切ではない。この戦略をとるアプリのキーとなるバリュー・プロポジションは、既存サービスの延長線上で、手間をかけずにニュースを配信できることだ。

 

Yahoo!ニュースも、LINE NEWS も、Yahoo! JAPAN ID LINEアカウント でログインしてもらうことで、ユーザはニュースを検索したり、読んだり、所属するグループや友人にシェアしたりすることができる。

 

主要な成功要因は、既存のユーザとブランド価値を生かすために、既存プラットフォームと緊密な連携をすることである。

  • ユーザの獲得……LINE は、ユーザ獲得を実に簡単にやってのけた。5,000万人いるメッセージアプリのユーザに対し、メインメニューに機能を追加して LINE NEWS をダウンロードできるようにしたのだ。この戦略は大きな効果を表し、LINE はテレビ CM を打たずに月間アクティブユーザ数で500万人を獲得した。ヤフーもブランド価値と既存ユーザを活用し、月間アクティブユーザ数180万人を獲得した。LINE NEWS は、モバイルに特化していて、非常に高いアクティブ・エンゲージメント・レート(64%)のユーザを多く抱えているため、ヤフーよりも順調な推移を保っている。
  • コミュニティ……Yahoo!ニュース LINE NEWS は、ユーザが所属するグループや友人と対話するよう促している。PC版の Yahoo!ニュースはユーザコメントの機能で知られるが、この機能はYahoo!ニュースのモバイルアプリにも導入された。LINE NEWS はニュースのハイライトを数行の文章で紹介し、LINE のグループや友人と共有しやすくしている。また、LINE は主に、他の人とシェアされすいゴシップ、エンターテイン面tの、ライフスタイルのニュースに特化している。


結論
 

こうして見てみると、モバイルポータルになれる可能性という観点から、ニュースアプリは戦略が極めて重要ということがわかる。日本におけるニュースアプリ戦争は、この市場を勝ち取る上で新聞戦略かマガジン戦略のいずれかを取るべきだということを教えてくれた。この戦いはまだ終わりを迎えておらず、2015年はさらなる進展が期待される。

投資先のナナピがKDDIグループ入り -娘がお嫁に行くおとうさんのキモチ

昨日多くのメディアで取り上げて頂いていますが、投資先のnanapiKDDIグループに入りした。


日経:『KDDI、スマホで連合 ネット11社が情報共有』

ナナピプレスリリース

KDDIプレスリリース


けんすうさん、和田さん、宮崎さんをはじめとするナナピのメンバーには、当初から掲げていた「世の中からできないことをなくす」、何億人、何十億人に使われるサービスを作りたいという大きなビジョンの実現にむけて、KDDIのより大きな後押しを受けて、更なる飛躍を期待しているし、心から願っている。本当によかった、おめでとうございます!

 

今回のような話は、日本のスタートアップエコシステムにとっても、非常に良いことだと思う。うまくいくことで、大企業とスタートアップの連携がもっと増えていくだろうし、大企業のお金が、スタートアップやベンチャーキャピタルに流れ、そのお金が次の世代のスタートアップに還流するという良い循環に入る。

 

そして、facebookに約1.9兆円(USD 19B)で買収されたWhatsappのファウンダーJan Koumfacebook取締役として活躍しているように、けんすうさんをはじめナナピのメンバーのもKDDI内で活躍し、ぜひキーマンがスタートアップと大企業で循環する流れができるといいなと思う。

 

日本のスタートアップ業界が、シリコンバレーのエコシステムのように一段ステージがあがるためにも、今回のケースが成功事例となることを心から応援している。

 

すごく喜ばしい出来事なのだが、わずかながら、一抹の寂しさ感があるのは、大事な娘が若くしてお嫁にいってしまった感じだ(笑)ナナピが、まだバイト入れても6人くらいで、ユーザも160万人くらいの時に、エンジェルの小澤さんの次のラウンド投資したのが4年前。気が付けば、4年は長いようで早く、ユーザも2000万人を突破し、KDDIグループ入りして、あっと言う間にお嫁に行ってしまった。良い旦那さんを見つけて、向こうのご両親も良い方なので、幸せな結婚でよかった。でも、家から出ていってしまうのは、ちょっと寂しい。娘が嫁に行くお父さんの心境ってこんな感じでしょうか??

 

けんすうさん、ナナピの皆さん、結婚おめでとう!KDDI家の皆さん、よろしくおねがいします!

プロフィール

高宮慎一
グロービス・キャピタル・パートナーズ 
代表パートナー

ベンチャーキャピタリスト。Forbesベンチャー投資家ランキング2018年1位、2015年7位、2020年10位。

支援先:アイスタイル、オークファン、カヤック、クービック、しまうまプリント、ナナピ、ピクスタ、ビーバー、ミラティブ、メルカリ、ランサーズ、リブルー、グラシア、ファストドクター等

ハーバードMBA

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