View of The World - ベンチャーキャピタリストの世界の見方

グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー / Chief Strategy Offier 高宮慎一のブログ (*個人的見解であり、所属する組織、投資先の見解とは異なります)

シード期のスタートアップのファイナンスで覚えておくこと3つ

昨日、今日とMOVIDAOnlabと連日代表的なアクセレレーターのDemo Dayが開催されたから、、、

、、、では全くないが(ホントに筆がおそくだいぶ時間がかかってしまったorz)、前のポストの最後のコメント通り、シード期におけるスタートアップのファイナンスで気をつけるべきことでポストを書いてみた。そして、流行りの「~3つ」という形式で 笑

 

*ちなみに、直接のオシゴトとしては、シード期の次の最初のVCラウンド辺りからが守備範囲なので、シード期におけるファイナンスについては直接利害関係はない。

 

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株式(または株式に転換されるCB=Convertible Bond)による資金調達は、一定の資金を得る代わりに会社の持分を投資家が持つことになる。いわば我が身の一部を削って売り渡すことに等しい。ことさらシード期はバリュエーション(時価総額)が低いので、その意味合いが強くなる。

 

ちなみに、ここでシードとはざっくり、創業メンバーが数人、場合によってはコアメンバーも揃っておらず、事業機会(Problem)とプロダクト/サービス(Solution)のアイディアはあるが、実際にモノを作ってユーザにぶつけてみるのはこれから、またはモノを出してみたものの大幅にユーザに支持を得るに至っていない、逆にそれをするために一般的には数百万~数千万円の下の方の資金を、一数千万~数億円の下の方のバリュエーションで調達するというのをイメージしている。シード期で、アーリーであればあるほど、起業家の思う将来ポテンシャルの価値と、現在の価値の乖離が大きいタイミングはない。起業家は「将来絶対に1000億円に企業になる」と信じているので、数百万円で10%程度の比率をもっていかれることは、純粋な資金調達の観点だけからすると、まじめに考えれば考える程高いと感じるものだ。だからこそ、起業家は、事前に資金調達で、何を得たいかを、ものすごく明確に考えておく必要がある。


 

 

1 資金調達で調達するものは、おカネでなくValue Add

外部からの資金調達で得られるものは、ざっくり次の3つ。

① おカネ

② 投資家からのアドバイス、支援

③ 投資家が抱えるネットワークへのアクセス


 

『① おカネ』だけで考えると「おカネに色は無い」、誰から調達しても500万円は500万円だということになる。一方で、業界で言うところのValue Add=『② 投資家からのアドバイス、支援』、『③ 投資家を通じたネットワークへのアクセス』の観点で考えると、誰から調達するかで、差は大アリだ。イケてる投資家から資金調達をすると、おカネだけでなく次のようなオマケがもれなくついて
くる。実はそのオマケの方こそが価値がある。


 

『② 投資家からのアドバイス、支援』:投資家によって得意不得意、芸風があるので人それぞれだし、ステージによっても濃淡はあるのだ、一般的には、足元どう立ち上げるかの短期的な戦略、上場またはその先までの成長も踏まえた中長期的な戦略、事業成長に伴う組織の拡大、その時に必ず直面する仕組化や組織作りの問題、採用などについてアドバイス、場合によってはかなり現場まで踏み込んで助けてくれる。また、同じような領域で、自分で事業経験があったり、複数社投資している投資家であったりすると、プロダクトやサービスそのものに関しても造詣が深く有効なアドバイスをくれることも多い。シードからするとだいぶ先の話にはなるが、上場経験者だったりすると、上場準備や資本市場とのコミュニケーションのあり方についてもアドバイスをくれたりもする。ことシード期ということであれば、過去の経験からくるプロダクトそのものへのアドバイスであったり、ついつい常勤メンバーであると足元のプロダクトの開発や短期的に売上を作る所に目が行きがちな所を、目線を広く、時間軸を長くするようなアドバイスをするのが投資家の価値となる。次の数億規模のVCラウンドをどうするか、上場に向けどのような成長シナリオを考えるか、果ては上場後も継続して成長するためにはどうすべきかなどだ。

 
 

『③ 投資家が抱えるネットワーク』:スタートアップの世界は、シリコンバレーでも日本でも、頭で理解している以上に人脈で物事が動くというのが体感値としては大きい。その点、イケてる投資家が業界内でもつネットワークは、一朝一夕で築くことができないので、ぜひとも乗っかりたい。その他スタートアップや事業会社と提携をしたり、次のラウンドの資金調達の際のVCをつれてきたりと大きな力を発揮する。イケてる投資家が入っていることはある意味お墨付きのようなもので、実際に提携や資金調達が成功するかはスタートアップの実力次第だが、ドアオープナーとしては絶大な効果を発揮する。イケている投資家の紹介であればキーマンが少なくとも一度は話を聞いてくれるだろう。特に、シード期においては、数億単位の次のVCラウンドを組成する所で、投資家のネットワークは大きく効く。本当にイケてる投資家であれば、VCの会社としての微妙な得意領域、そして組織の中での意思決定の進め方などを把握して、どのようにアプローチしたら良いかアドバイスをくれる。そして、実はここがかなり重要などだが、個別ベンチャーキャピタリストの得意領域、性格も踏まえて誰に話をもっていくのが良いかアドバイスをしてくれるだろう。

 

シード期の安い株価で相応に大きなシェアをもっていくからこそ、そしてシード期の混沌とした状況から同じ船にのるパートナーとして、飛躍する基盤を一緒に作ってくれることを期待するからこそ、誰に投資して貰うかは超重要。逆説的ではあるが、違う言い方をすると会社を大きく成長してくれることにコミットして(それなりに時間、マインドシェアを使って)くれて、本当に貢献してくれる投資家であれば、フルタイムのメンバーに株やストックオプションを分けるようなイメージで、こちらから請う形ででもシード期の安い株価でも投資して貰いたい。

 


 

2 “イケてる投資家”を見極める

そこで、スタートアップとして気になるのは、「じゃぁ“イケてる投資家”ってどうやって見極めたらいいんだ?!」という話だろう。恐らくどの投資家も投資前は「ハンズオンでがっつり支援します!」と営業モードで言うだろう。投資後、具体的に何をやってくれるのか、そして本当に成長に貢献してくれるのかを見極める必要がある。

 

まずは、本人にストレートに聞いてみる。「大きく成長する上で、今のウチの事業の課題は何だと思いますか?」、「その課題を解決するためにはどうすべきだと思いますか?」、「投資して頂いた後にはどのような形で支援いただけるのでしょうか?」。実際に事業をやっている経営者が聞いて、納得がいく、学びがある答えが返ってきたら良いサインだ。

 

そして、一番良いのは、その投資家と実際に一緒に仕事をしている既存投資先や一緒に投資している投資家に聞いてみること。自分の知り合いを辿って聞けるのが一番良いが、その投資家に紹介してもらうのでも良いだろう。大概、狭い業界内で適当なことを言うと自分のレピュテーションにも関わるので、本音の意見をくれるはず。投資家への義理があってなかなかぶっちゃけられない場合でも言外のニュアンスは感じ取れるだろう。


 

 

3 増資だけがファイナンスの手段だけでない

じゃぁ、残念ながらイケてる投資家とコンタクトがない、イケてる投資家から断られてしまた、、、という場合はどうしたらよいか?

 

まずは、ある投資家にある時点で投資して貰えなくても世の中の終わりと思う必要は全然ない。投資家はストライクゾーンに来た球を全て振らなくって良く、“ど真ん中!”、“今が絶好のタイミング!”と確信が持てて始めて投資する生き物なのだ。多くの投資家は(個人のエンジェルは別だが)その背後にいる投資家のおカネを預かる運用受託者としての責任があるので、ストライクゾーンギリギリでボールかどうか臭い球は見送ったりするものだ。ましてやピッチャーがモーションに入ったばかりで球を投げてもいないシード期ならなおさらだ。そして、あるタイミングでは投資しなかった場合でも、次の機会で投資をすることは良くあることなので、イケてると思った投資家には将来のラウンドも視野にいれ、継続的にコンタクトし、事業の進捗などをアップデートしておくとよいだろう。


 

ファイナンスについておカネだけでの視点で考えると、次の4つがある。

(0) 借入

(1) 起業家の自己資金で回す

(2) 会社のキャッシュフローで回す

(3) 株式(または株式に転換されるCBなど)での調達


 

(0) 借入: シード期で売上も立っていないようなスタートアップだと、まず銀行などの金融機関は貸してくれない。そうなると、親族、知人などから、(場合によっては起業家が個人で)借入をすることになってしまう。基本的にはスタートアップへの投資はハイリスク・ハイリターンなので、ほぼ返ってこないくらいの心構えが必要になってくる。本当に余力がある人、またはよっぽどスタートアップや投資に精通したプロ筋ならいざしらず、ふつ~~うの人から借入をすると、いざ返せない時に大揉めに揉めるリスクがある。起業家個人としてファイナンス、社会的リスクを背負うことになる。起業家個人としてリスクを背負うと、経営者として事業上の適正なリスクを取りにくい構造になりがちなので、知人からの借入は、個人的にはよっぽど経済的に余裕がある人かスタートアップや投資に精通したプロに、リスクとリターンをきっちり説明した上でない限り余りお勧めではない。


 

(1) 起業家の自己資金で回す: 起業家が個人の貯金を切り崩してガンガン、スタートアップに突っ込む‐これは借入と同じ個人リスクと事業リスクを分離するという観点で、こちらの場合は全くお勧めしない。ただし、まだまだアイディアだけのタイミングで、前職で安定収入を確保しながら、夜、週末のお仕事として、自分+本当にコアな仲間の最小限のコストでプロダクトを作るためにということであれば、現実解としては悪くないだろう。本当は、100%絶対いけると信じているアイディアに全力投球し、スピードを最大化するために、外部から調達をし、メンバーの生活も保証するというのが理想だ。ただ、現実としては、アイディアだけの段階やイニシャルのプロダクトを出してみたもののユーザの反応がイマイチでまだまだ改良をしなければならない場合、外部の投資家から資金を調達するのが厳しいことも大いにありえる。その場合、投資家に対して、事業上意味のあるマイルストーン(KPIや営業のパイプラインなど)を達成して、計画を達成する実績を見せて調達をする作戦が有効だ。そのマイルストーンを達成するまでは、物理的・時間的にはシンドイとは思うが、個人のリスクもヘッジするという意味でも、スタートアップを夜、週末のお仕事とするのは結構おススメだ。


 

(2) 会社のキャッシュフローで回す: 自己資金で回すと同じ議論で、本命事業に外部から資金を調達するにはちょっとタイミングが早い時には “ナシじゃない”オプションだろう。ただ、受託などのラーメン代稼ぎ(目先で食っていくための短期的かつスケールしない収益稼ぎ。余談だが面白いのは英語にもなっていて“Ramen profitable”と言う 笑)に走ると、ついつい受託ループから抜け出せなくなってしまったり、クライアントにちゃんと納品するために当初想定より多くのリソースを食ってしまったり、本命事業に回すリソースが足りなくなってしまったなんていう話は、スタートアップが陥る典型的な落とし穴だ。それに気をつける前提で、既に起業していてピボットするケースや勢い余って既に前職を辞めてしまった、またはラーメン代稼ぎの事業がある程度放置していてもチャリンチャリン鳴るのであれば良い手だろう。ただ、本命事業に全然集中できない状況になると、本当に本末転倒なので、そこだけはくれぐれも気をつける必要がある。受託ループにはまり中小零細企業に終わってしまうスタートアップは本当に多い。


 

(3) 株式(または株式に転換されるCBなど)での調達: 早く本命事業に集中するために、外部投資家から資金を調達するのは理想的だ。ただ、借入の議論と同様、というか、株式になるとよりリスクは高まるので、ノンプロの知人から株式での調達は基本的にはお勧めしない。プロとしてリスクも十分に承知で、資金以外の面でのValue Addも大きいイケてる投資家から調達すべきだ。投資を受ける側の視点でも、前述の通りシード期においては、投資金額の割には(数百万-数千万円)それなりのシェア(10%内外)をもっていかれることになるので、誰からでも良いので株式で投資を受けられれば良いというのではなく、最強のパートナーと思える投資家を迎えいれられるまでは、何とか自力でもっていくのが良いのはないかと思うそこに至るために、投資家に認められるマイルストーンを達成するために、自己資金や事業のキャッシュフローでつないでいく。

 

まとめると、シード期においては、イケてる投資家から株で出資して貰うことに合わせ込みにいくために、自己資金や事業のキャッシュフローを原資に、プロダクトをリリースしで一定の成果を出す。そして、最強の外部アドバイザーとしての投資家とともに、事業のスケール、スピードを上げることに、ただひたすらそのために突っ走ることができる体制を作ることが、目下の目標だろう。

 

 
 

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エコーズAct3のスタンド攻撃をくらったように筆が重いのだが、、、いつか、次はシード3部作の完結編として、シードににおける“イケてる投資家”にどんな種類のプレーヤーがいるか書いてみよかと。

Y Combinatorというスタートアップ量産装置

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先週Y CombinatorDemo Dayにいってきた。San Franciscoにつくなり、牡蠣で食当り→iPhoneの電話帳が消える→レンタカーがレッカーに誘拐される→フライトに一抹の不安を覚え日本でお祓いをしてもらうという珍道中にもめげず、YCの仕組みとしてのすごさみたいなのを書いてみた。

 

Y Combinatorは、日本だとY Com=「ワイコン」と略されることが多いが、シリコンバレーだとYC=「ワイシー」と訳されることが多い。Paul GrahamTrevor Blackwell,Jessica LivingstonRobert Morris(投資家トリビア的に面白いのは、YC自体もSequoiaからの投資を受けている。そして、Paul GrahamJessica LivingstonYC設立後に結婚、、)によって設立されたシード期に特化した投資会社、通称アクセラレーターなのだが、その特徴はなんといっても投資とメンタリングを伴った3ヶ月のプログラムがセットになっていることだ。

 

そのプログラムは、年に2回走っていて、各回はBatchと呼ばれている。例えば、今回参加したDemo DayBatch47(去年行った時の75社くらいに比べるとそれでもだいぶ少なくなったようだ)参加している。YCに参加するためには、スタートアップはまずは自分達のアイディアをベースにYCの選考を受ける。やはりここはシード期、事業アイディアそのものよりも、チームを見ている比重が高いようだ。プログラム開始後ピボットをすることは多いし、複数回ピボットをするチームも複数いるようだ。また、アイディア無しのチームだけを評価する選考枠も最近はできている。なので、チームの経験、具体的には起業経験ややろうとしている領域での実務経験があるかなどが効くようだ。ちなみに、日本からはAnyPerkが初2012年に参加したのが初、かつ今の所唯一の会社となっている。

 

そして、スタートアップは、晴れて合格すると、数百万円出資を受けて、プログラムに参加することになる。基本的にはファウンダー一人につき$5,000程度で、%から10%程度のシェアを取ることになる。これは、結局Valuationとしては数千万円程度な訳で、スタートアップにとっては相当大きく身を削っていることになる。これが、高いか、安いかは、各スタートアップが何を必要としていて、それをYCから得られるかどうか次第だろう。

 

プログラムに参加すると、基本的に3ヶ月間缶詰になる。3ヶ月間チームでYCの近くに住み、ひたすらプロダクトを磨くことに集中することを求められる。ネットワーキング禁止、投資家と会うこと禁止、(恋愛禁止かはわからない、、、が)。そして、Office Hourと呼ばれるYCの担当者とアポイントが取れる時間帯が設定され、そこでアポを取りアドバイスが貰える。各Batchには数十社もいるため、YCの担当者は場合によっては名前も覚えていない、前回のメンタリングセッションでどんな議論になったかを覚えていないということもあるらしい。あるYC参加者によると、これは必ずしも悪いことではなく、投資家目線で初見で聞かれるハイレベルな質問に対して、答えられうるよう徹底的に鍛えられ良いとのこと。そして、YCではRon ConwayYuri Milner, Andreessen Horowitz General CatalystSequoiaMaverick Capitalなどの超一流の投資家(エンジェルからVC、未上場株にも投資をするヘッジファンドまでフルラインで揃っているのが面白い)と提携しており、YCに入ると小額ではあるが自動的に彼らから追加投資が貰えたり、彼らからメンタリングして貰えたりする。また、Mark Zuckerbergなどシリコンバレーの超大物の講演もアレンジされるのもYCならではだろう。

 

そして、各バッチのハイライトはなんといってもDemo Dayだ。そのバッチの参加スタートアップが一同に会して、投資家400-500人くらいを前にピッチ(プレゼン)を行う(投資家向けDemo Dayの前日、YCの卒業生向けのDemo Dayがあり、全て本番と同じようにピッチをしている)。そして、このピッチ、なんと12分!!正直なところ聞いている投資家側としては、2分ではスタートアップのことを理解しきるのは難しい。。。スタートアップにしても、2分で自分達の全てを伝えきるのは無理だろう。おそらくYCの指導による所が大きいのだろうが、よってスタートアップのピッチは極めてハイレベルかつコンパクトになっている。

  1. 自分達のサービスのバリュープロポジション=世の中のどのような課題にアプローチしているのか(Problem)
  2. プロダクトコンセプ=それをどのように解決するのか(Solution)
  3. プロダクトがどんなに伸びているのか(売上やユーザ数などのKPIの週次や月次の伸び率を強調するのだが、よくよく縦軸を見ると単位が数百や数十だったりすることもちらほら、、、)
  4. そしてチーム

といった感じだ。それだけでも、2分という時間内ではいっぱいいっぱいだ。ちなみに、どれだけ資金調達に成功しているかをピッチで言うのは禁止されている。調達できているスタートアップへのタダ乗り投資を防止するためだ。そして、前のチームが終わると、待ち構えている次のチームが即ピッチを始めて、次々と、ピッチしていく。

YC
が仕組みとしてすごく考えられているのは、投資家側にWebベースのシステムへのアクセスが与えられていて、ピッチを聞いて良いと思ったスタートアップには、Demo Dayの当日にアポを取ったり、興味があることを示すLikeボタンがあったりする。また、逆に、YC内にはスタートアップが投資家を評価をしているデータベースもあり、資金調達をした/真剣に検討をした投資家に関して、評価を蓄積していっている。ここで評価が余りに悪いと出入り禁止になるので投資家側も気をつける必要がある。こわい、こわい、、、。

 

 

と、まぁ、YCのやっていることはこんな感じなのだが、では、スタートアップにとってYCの価値はどんな所にあるのだろうか?

  1. メンタリング前述の通りYCのメンバー及び外部のアドバイザーが、経営、プロダクト、チーム作り、法務に至るまでスタートアップに必要な多岐な領域でアドバイスをしてくれる。お金そのものには色はない、誰から調達しても同じだ。だったら、お金以外の所でアドバイスをくれる“Smart Investor”から調達すべきだ。

  2. 横のネットワークYCBatchはいわば同期だ。同期間、しかもYCにセレクトされたそれなりにレベルの高い者同士で、切磋琢磨したり、励まし合ったり、アドバイスし合っているようだ。実利的な所でも、同じバッチの参加者内でβテストをしていたり、最初のユーザーになって貰ったりしているようだ。世の中から注目され、発信力もあるYC参加者が使うことで一気にバイラルして広がるケースもある。

  3. YCというブランドいわば学歴みたいなもので、学歴があったからと言って社会に出てできる訳ではないが、何かとチャンスのドアを開いてくれる。YC出身ということだけで、良い意味での色眼鏡では見られるだろう。

この辺りまでは割と当たり前というか、あればあったで嬉しいくらいだと思うのだが、ここからのズバリYCという装置のミソ中のミソだと思う。

 

縦のネットワークスタートアップにとって次のラウンドのファイナンスをどうするかというのは、間近に迫った死活問題だ。YCではDemo Dayで数百名に及ぶ主要投資家を一堂に集め、そこにピッチさせてくれる。一気に主要な投資家にアクセスできる場なんてそうあるものではない。更に、なんと言っても、通常並大抵では会うことすら叶わないRon ConwayYuri Milnerと言った著名エンジェル(面白い所で現在ではエンジェル投資もしているMC HammerDemo Dayにきていた笑)SequoiaAndreeesenと言った超一流VCのしかも看板パートナーから、メンタリングという名の“プレ営業”のための時間をもらうことができる。また、その他の超有名VCDemo Dayの前には各Batchの参加者の情報を入手し、唾をつける動きを始める。要するにイケてるスタートアップは、Demo Day以前にピカピカの投資家につながることができ、ある程度“事前に握る(あくまで非公式だが)”ことができる。このような強者連合はシリコンバレーでも日本でもある意味当たり前だし、YCが無くても成立している。しかし、YCという装置の仕組みとしての素晴らしさは、その他大勢のスタートアップもほぼ全てファイナンスの成功に導いている点にある。Demo Dayはお披露目の場であるとともに、実際のファイナンスが決められる場となっている。参加する投資家には、YCから「Hand Shake Rule(口頭合意)」のガイドラインが配れるくらいである。投資家が○○の条件で投資をしたいと言ったのに対して、スタートアップが○○の条件であれば投資を受けてたいと合意し、Demo Dayの後にメールでお互いに確認をしたら、契約者に落ちていなくても、合意とみなすというのがガイドラインだ。そして、実際にDemo Day当日にバンバン投資が決まっていく。そうなってくると、よっぽど名のある投資家は別として、その他大勢数百の投資家は投資家間での競争を煽られながら、なるべく良い条件で、なるべく早くオファーを出すようプレッシャーにさらされる。オークション的な心理が生まれ、そこに市場原理が働くようになる。ピカピカのスタートアップとピカピカの投資家と、そこそこのスタートアップにはそこそこの投資家と、それなりのスタートアップにはそれなりの投資家と、、、といった形でマッチングされていく。結果として、YC参加のほぼ全てのスタートアップに次ラウンドのファイナンスが決まるのだ。シード期を生き抜き次の段階まで到達するスタートアップを量産し、いつかは大化けする可能性をつなぐ‐そう言った意味では、YCYCの中のみならず、スタートアップ生態系全体がうまく回る所に大きく貢献していると言える。

 

 

ちなみに、YCDemo Dayの次の日にReid Hoffman(LinkedIn会長、Paypal Mafiaの一員、トップVCGreylockのパートナー)と話をしていたのだが、彼はこのYCの仕組みついて面白い言い方していた。YCはオンラインのシリコンバレーだ」と。今までシリコンバレーはシリコンバレーという地理的制約にとらわれていた。地理的な制約の中での人間関係の中でエコシステムが成り立っていた。それが故に、地理的、またネットワーク的にアウトサイダーがシリコンバレーに入り込んで、エコシステムのメリットを享受するのが難しかった。しかし、YCはオンラインで全米、場合によっては世界中からスタートアップを募集し、シリコンバレーのネットワークにつなげた。人口や経済が各都市に分散しているアメリカらしい見方だなぁと思った一方、日本も東京のスタートアップシーンの集積度は十分になってきている今、東京以外のスタートアップを活性化する仕組みができたらいいなと思ったりした。

 

 

と、長いこと、かなりマニアックな内容を書いたので、近いうちにスタートアップ目線でシード期におけるアクセラレーターやエンジェルからの投資をどう考えようか書いてみようかなと思った次第で。
でも、ほんとに書くかな、、、汗




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